ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
誕生日にgamellaからプレゼントしてもらった一冊。とても面白かったです。
確率という考え方は、誰もが数学の授業で勉強すると思うのですが、その発展である統計的手法の、現実の問題を解決する上での強力さは、時々唖然としてしまうくらいです。
その最たる例が保険だと思うのですが、例えば自動車保険会社は、ドライバーがどのくらいの確率で事故を起こすか予測できるからこそ、商売が成り立っているわけですよね。
個人の運命は予想できなくても、それが集団となると、かなりの精度で予測できてしまう…というのは、正直言ってとても不思議な気がします。
考えてみると、こういう統計的予測の元になってるのは、実際に予測されるのとは全く別の人の、全く別の場所で起こった事件なんですよ。
「なんで統計的予測って当たるんだろう?」という疑問はあるのですが、現実としてそれは当たります。当たってしまうから、それを力の源泉とする経済学は、非常に強力な学問であるわけです。
この本の著者の一人である、経済学者のレヴィットさんが凄いのは、その力をとても身近な問題に使っているということなんですね。例えばこの本で最も大きなテーマとなっているのが、「1990年代、どうしてアメリカの犯罪は急激に減ったのか?」ということです。
社会学者が色々なことを言っている中で、レヴィットさんは経済学の手法を用いてその原因を見つけます。それも、画期的な新手法ではなくて、経済学では使い古された手法を用いて、です。今まで実験というものが存在しなかった分野に、それがもたらされたわけですから、他の学者さんは大変だったでしょうね。
他にも、「子供の成績に、親はどのくらい関係があるか?」とか、とても面白いテーマがあります。
こうして見ると、経済学的な手法は、もっと幅広い事柄に使われてもいいのかもしれません。世の中がIT化してくると、今までは宙に消えていたデータが集まってきます。同時に、それを解析するためのコンピューティングパワーも増大しています。
このデータをうまく活用すれば、人間が解くことのできる問題は、もっと増えるんじゃないかな。下手をすると管理社会になってしまうかもしれないですけどね。
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