« スターバックスのコーヒー豆 | トップページ | 電脳コイルが面白い »

世界を壊す金融資本主義

世界を壊す金融資本主義世界を壊す金融資本主義

著者:ジャン・ペイルルヴァッド
出版社:NTT出版
gamellaが最近グローバル経済に興味を持っているということで、誕生日プレゼントにそれに関連した本をいただきました。どうもありがとうございます。 いただいたのはこの本と、「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」だったのですが、「人々は~」の方はちょっと内容が専門的だったので先にこちらを読ませていただきました。分量も適度で平易ですし、経済に関する知識があまりなくても読みやすかったです。

グローバル経済に関する本はたくさん出ているのですが、どうやら大きく二つの種類があるようです。一つは、グローバル経済の恩恵を説き、その効果(コスト削減効果や顧客層の拡大など)をどのように甘受するかを解説したもの。もう一つは、グローバル経済が現代社会にもたらしている問題を警告するもの。この本は題名から想像できるように、どちらかというと後者に属します。

ただ、資本主義を批判して社会主義を説いたマルクスが優れた資本主義の研究者だったように、批判を行うにはそれがいったいどういうものなのか、正確に把握する必要があります。その点、この本の著者はフランスの政府で首相官房副長官となった後、銀行のCEOを永年勤めており、しかも学校で教鞭もとっています。まさに実地でグローバル経済を経験してきたわけで、こういう人が読みやすい本を書いてくれるというのはかなり貴重ですよね。

著者が繰り返し訴えていて、印象的なのは、「資本主義に代わるモデルは現状ない」ということです。資本主義が世界に恩恵を与えており、これに代わるものがないことは、この数十年でよりはっきりしました。先進国が恩恵を受けていることはもちろんですし、

「半世紀の間に、途上国の人々の平均寿命は四十一歳から六十四歳にまで延びた。飲み水を確保できない人口の割合は65%から20%に下落した。乳幼児の死亡率は半減し、文盲率は52%から26%に低下した。現在、国際機関が目安としている中流階級の定義である年間6000ドル以上の所得がある層は、中国人で三億人、インドで9000万人、ブラジルで6000万人まで拡大している」
のです。

ただし、もちろん現代においてグローバル金融資本主義へと進化した資本主義は、様々な問題を抱えています。例えば、企業が際限なく活動を拡大することによって起こる環境破壊、グローバル化による各国文化の破壊、株主配当が優先されることによる富の集中です。
ただ、筆者が説くのは、これらの問題は副次的なものであり、最も根本的な問題は、現代においては「何者もグローバル経済をコントロールしていない」ことである、ということです。例え国家であっても、です。

グローバル経済では資本はまさに瞬時にして移動してしまいますし、企業活動でさえも例外ではありません。国が企業の活動を規制しようとすると、企業はそこから逃げ出してしまうかもしれないのです。つまり、企業活動はグローバルになったにも関わらず国家権力はローカルであるため、企業をコントロールする力は既に失われているのです。民主主義における原則は「国民主権」ですが、その主権はあくまで国家に対するものです。そういう意味では、現代において国民は自分のおかれている環境に対する主権を失っているのです。

しかし、株主会社であれば、株主がコントロールできるのではないか?と言われるかもしれません。ただし、それも大変難しい状況です。現代においては株の保有もグローバル化していますが、株主自身は言語、文化によって分断されており、コミュニケーションを取ることは困難です。例えば、ある株主が「この会社には環境保護を優先して欲しい」と思っても、それを他の株主に訴え、同意を得ていくのは容易ではないでしょう。
また、現代の企業では、経営者と資本の保持者は分離しているのが普通です。従って、経営者も会社を本当にコントロールすることはできません。
よって会社は、株主たちに共通する、「より収益を拡大させる」という一つの目標に、ひたすら猛進していくことになるのです。

筆者は、このような現状を解決するには、各国民や株主たちが団結し、企業をコントロールできるようにしていくべきだ、と説いています。困難な道のりであると思いますが…。

この本を読んでいるときに、ちょうどブルドックとスティールパートナーズとのバトルが展開していました。ちょうど良いタイミングだったので注目していたのですが、結果はブルドックの勝ちということになりそうです。ブルドック側は株主総会で3分の2以上の賛成を得て、スティールパートナーズに対して買収防衛策をとることになりました。
ブルドック側が勝つことができたのは、幸いなことに、ブルドックの株主がほとんど日本人だったからだと思います。そうであるからこそ、会社側は防衛策の必要性を株主に理解してもらうことができました。例えば半分以上の株主が国外の人だったら?このような防衛策は難しかったでしょう。

現状日本は、世界でも有数の債権国です。従って、特に日本に限って言えば「国民主権」は働きやすい状況ではないかと思います。しかし、それが今後どうなっていくのかは、全く不透明であると思います。

|

« スターバックスのコーヒー豆 | トップページ | 電脳コイルが面白い »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

なるほど、なるほど。

> 筆者は、このような現状を解決するには、各国民や株主たちが団結し、企業をコントロールできるようにしていくべきだ、と説いています。困難な道のりであると思いますが…。

この運動はかなり顕著になってきています。リサイクルに全く興味のなかったアップルにiPodの完全回収を行わせたのも社会運動家からなる株主による圧力ですね。今後、企業はCSR(企業の社会的責任)を気にしないと、長期的には株価を維持できなってくると思います。

最近はグローバル経済という視点の対立軸として、ロシアやイスラム諸国のような資源を武器にグローバル経済に入らない国に注目しています。特に、プーチンが独裁するロシアはかなり恐ろしい独裁体制ことになっているようで、このあたりは「プーチニズム」っていう本に詳しいです。

投稿: gamella | 2007.07.02 21:19

なるほど、株主が団結している例もあるんですね。アメリカの個人株主はそういう意識が高いのかもしれないですね。

非グローバルというのは、もしかしたら正解なのかもしれないな、と思いました。資源のない日本では、単なる保護政策ではない道を探さないといけないですけどね。

投稿: ashel | 2007.07.04 00:30

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1789/15621463

この記事へのトラックバック一覧です: 世界を壊す金融資本主義:

« スターバックスのコーヒー豆 | トップページ | 電脳コイルが面白い »